ナマケモノときどきヤルキモノ

特に食欲に忠実です

史上最高についてない日

我らが日本には「ふんだりけったり」や「泣きっ面に蜂」という言葉が存在する。

これらは『悲劇に悲劇が重なり絶望する』ことを表している。

 

 

私という者はいたって平凡である。

 

「(私)ってちょっとネジ足りないよね〜wwwww」

とはよく言われるが、これもまた実は社交辞令のひとつなのである。

 

「(私)ってちょっとネジ足りないよね〜wwwwwだから面白いし絡みやすいよズッ友だよちゅっちゅ」

の略だと言っても過言ではないはずだ。

 

ーーーしかしながら、あの日の私は一段、二段、いや、十段違った。

あれほどの不運さは普通という言葉で片付けられない。

「ふんだりけったり殴ったり骨折ったり爪剥がしたり目潰したり強姦したり殺したり」

というレベルだ。

神様もOh my god ! と頭を抱えて私のつむじを眺めているに違いない。

 

では、某日の私をご覧いただこう。

 

 

7月某日 晴れのち雨

 

私はレポートに追われていた。

最後の「。」をエンターキーで力強くキメた頃には朝日が眩しかった。

やがて寝落ちし、気がつくと陽は真上に昇っていたーーー

 

その1『遅刻』

 

パジャマの上だけを着替えて飛び出し、ママチャリを漕いでコンビニへ。

遅刻は遅刻だ

それならば、と私は5分間と20円を犠牲にレポートを印刷しようとしていた

はやる気持ちを抑えきれず、指先はリズムの天国の如くビートを奏でる。

しかし、その犠牲は報われなかった

 

その2『プリンター故障』

 

焦りと苛立ちを露わにしたため息をつく。

プリンターに唾を吐きかけたい衝動に駆られながらも、コンビニをあとにしてチャリを漕いだ

憎たらしいほど澄んだ青空にFU○Kである

しかし、教室に踏み入った瞬間、異変に気付く。

 

その3『教室変更』

 

単位ヌンティウスを救出すべく、私は走った。

教室の人全員に注目されながらドアを勢いよく開け、肩で息しながら席に着く。

友人が「レポートは?」と心配そうに聞いてくる

わかっている、だから言うな

私は鋭い眼光で友人を黙らせ、言い訳を必死に考えた。

しかし、私はこれまでに親戚を殺しすぎた

もうこれ以上、親戚は殺せない

そう思った私は観念し、授業が終わるのと同時に先生に名乗り出た。

「ちょっとだけ待ってやる」

淡い希望が見えた。

単位ヌンティウス救出、か?

しかし、この日の不運っぷりはこんなものではない。

 

その4『学生証を忘れる』

 

大学のハイテクさを恨む日が来るとは。

コンピューター室は学生証をかざして入る仕組みなのだ

プリンターはすぐそこなのに、なんてもどかしい!

トムジェリーの如く身体を翻し、事務室へ走った。

入室許可をもらい、ようやくプリンターとご対面

しかし、私は思い出してしまった

 

その5『迫り来るアルバイトの時間』

 

やばい!あと5分で学校から出なければ!

私は印刷したものを握りしめ、研究棟へ駆け抜けた

先生の研究室のドアを気持ち強く叩く

しかし、返答はなかった

あと渡しさえできれば単位もアルバイトもGOできるのに!

もはやここまでか、と失望しかけたその時だった。

「なにか用?」

こいつは、モーゼに違いない。メシアだ、メシア!

この女性は絶望の海を切り開いてくれるのだ。そう信じて疑わなかった。

「○○先生にこれを渡してほしいんですが」

 

その6『モーゼは雷おばさん』

 

メシアだと思われた彼女は顔が歪み、鬼瓦のような牙を立てた。

突然始まったのび太ママのようなお説教!

お前誰だよ!なんて言ったら殺される。

真剣にそう思った私は、柄にもなくしょんぼりと説教を受ける。

ようやく解放された時には目標の先生が哀れみの目でこちらを見つめていた

そんな目で見るんじゃない!

羞恥でおかしくなりそうだった私は二枚の紙切れを先生に差し出し、すぐさま駐輪場へ駆け出した。

 

その7『ゲリラ豪雨

 

チェーンが外れそうなほどハイペースでペダルを回していると、頬に冷たいものが落ちてきた

空を仰ぎ見ると、バケツの水をひっくり返したのかのような雨が私を襲った。

ゲリラ豪雨

雨で目は痛いし、デニムはずり落ちて半ケツであった。

やっとの思いで家に帰り着き、服を絞って洗濯機に入れ、髪の毛を乾かした。

もうこの時点でアルバイトの遅刻は確定である。

店長の怒号を覚悟した私は半泣きで連絡を入れる

「今日シフト間に合いません」

 

その8『とんでん返し』

 

「え?あんた夜からだけど?」

下着姿で窓を開けると、雲の切れ目から一筋の光が差していた

その光は我が家のベランダを照らしており、私は目を細めた

しばらくそうしていると、なぜだか笑いがこみ上げてきた

鼻の穴を膨らませ、頬を緩めると細い息を吐き出す。

未来は明るかったーーー