ナマケモノときどきヤルキモノ

特に食欲に忠実です

夏のおわりと秋のはじまり

ぬるくなったつり革を握りしめて窓の外を見つめる。窓の外は橋の支えが横切るたびに何かの信号のように、チカチカと点滅しながら川の輝く水面が見え隠れしている。水面はピンク色の絵の具に水をたっぷり差したような鮮やかな色をしていた。 夕焼けには一体何…

仏像の瞬き

わたしは『福岡県』に対して特別な感情をもっている。それは決して「父の実家があるから」といった一面的な理由ではない。 いま2018年、わたしは5年ぶりに父の実家に来ている。 ついこの前までわたしの祖父の弟にあたるほとんど関わりのない親戚の家にいた…

「傘からアイデンティティを奪いたい」

私はよく傘を置き忘れます。 駅に、バスの中に、コンビニに。 ひどい時は3本連続で買った傘をその日になくしました。 私は悩み、そして傘の最大の欠点に気づいてしまったのです。 みなさん、駅の忘れ物コーナーを見たことはありますか? 傘が大半なのです。…

満員電車

ーー私はたった今、生まれて初めて地球から離れた。 厳密に言えば、 ブランコで空を目指したこともあったがーー 「地球から5センチ浮遊中の大学生(20歳)と中継がつながりました。どうぞ。」 「はい、えー、聞こえますか。アーアー、マイクテストマイクテスト…

欲望と葛藤と融合

ここは店名の語尾が ア なのか、或いは ヤ なのかで人々を惑わせる某レストラン ソファーにもたれかかり、メニューに目を通すはたこ(20)。 彼女は冊子を数往復めくり、テーブル上に置かれた呼び出しボタンに手を伸ばした。 「ご注文承ります。」 店員が店の…

カフェで女たちにささやかな喧嘩を売った話

突然だが、私は最近ロイヤルミルクティーにハマっている。 高校生までは「午後の紅茶ミルクティー」で満足していたが、そんな私を大きく変えたのはセブンイレブンの「ロイヤルミルクティー」との出会いだ。 これがまた美味い!んだ! 程よい甘さ、まろやかさ…

史上最高についてない日

我らが日本には「ふんだりけったり」や「泣きっ面に蜂」という言葉が存在する。 これらは『悲劇に悲劇が重なり絶望する』ことを表している。 私という者はいたって平凡である。 「(私)ってちょっとネジ足りないよね〜wwwww」 とはよく言われるが、これもま…

ひとり居酒屋デビュー戦

「おっちゃん、生1な!」 頬を赤らめて、空になったジョッキをかかげるこの瞬間をどれだけ待ちわびたことか! すっかり当たり前になった終電での帰宅 みずみずしさを失った老婆のように背中を丸め、いつもの20分間の道のりを歩もうとして気づく 焼き鳥の織り…